技術情報
鋳造と鍛造の違いについて
素材の代表的な製作方法として、*鍛造と鋳造があります。どちらも型を用いて目的の形に成型する加工法ですが、その性質は大きく異なります。
今回は鍛造と鋳造の違いについてご紹介します。
*本コラムでは比較の為、型打鍛造を鍛造としてご紹介します。
1.製作方法の違い
鋳造とは、金属を高温に熱して液体にした後、型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法です。複雑な形状でも比較的容易に加工できることが大きな特徴です。一方で、鍛造とは金属を固体のまま叩いて変形させることによって成形する加工方法です。金属を叩くことによって、高い強度が得られることが大きな特徴です。
2.性質の違い
鋳造の場合、溶かした金属を型へ流すときに発生するガスが原因で、金属の内部に小さな気泡が現れます。これは、鋳巣(いす)と呼ばれ、部品の強度や機能に悪影響を及ぼすことがあります。
一方で、鍛造の場合は固体の状態で叩いて変形させるため、気泡が発生することはありません。また、叩かれることで内部が圧縮され、金属組織が緻密となることで強度が上がります。
3.コストの違い
一般的に、鍛造品は鋳造品と比べて高価とされています。しかしながら、鋳物の種類によっては鍛造品の方が安価な場合もあります。鋳鋼やステンレス鋳物、アルミ鋳物などは、鋳造品の中でも高価な部類となり、形や用途、量によっては鍛造品が用いられます。
4.鋳造と鍛造の違いのまとめ
| 鋳造 | 鍛造 |
成型性 | 複雑な形状や細やかなデザインの成型が可能 例)マンホール、銅像など | 設備次第で複雑な成型もできるが、鋳物には及ばない 例)包丁、車のホイールなど |
コスト | 比較的安価であるが、鋳鋼やステンレス鋳物、アルミ鋳物などは高価 | 比較的高価であるが、成型の難易度や量によっては安価となる |
強度 | 組織が粗いため、強度が低い | 組織が緻密であるため、強度が高い |
内部欠陥 | 鋳巣と呼ばれる空孔があり、一般的には有害なものとされる | 叩いて(加圧して)成型するため、内部欠陥は発生しない |
イニシャルコスト(型の費用) | 砂型や発泡型のように、安価な素材を型として使用できるため、比較的安い | 加圧に耐えられる高価な金属を用いるため、比較的高い |
鋳造から鍛造に工法転換した事例①
こちらは、自動車や産業廃棄物などを解体する際に使用される破砕機用のハンマーです。一般的には高マンガン鋳鋼を採用することの多いハンマーですが、型打鍛造化をすることで、鋳鋼に勝る硬度、耐久性を得ることができます。当社のハンマーにおいては、特殊な高周波熱処理を施すことにより、ハンマーの回転軸となるハンマーピンの長寿命化にも成功しています。
鋳造から鍛造に工法転換した事例②
こちらは、ガス配管用の部品です。
従来鋳物で製造されており、ガス漏れがないか検査に時間を要していたが、型打鍛造化することで検査時間を大幅に短縮することに成功。
鋳物品のように時間と共に漏れが発生することなく安心して使用可能です。
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